技能実習生制度は、「あくまで技術を教える実習制度だよ」とは言っても、人材不足に悩む企業にとっては救いとも言える制度で、現在32万人程度の技能実習生が日本で活躍しています。
しかし、労働力として期待していたのに、予定した入国日を過ぎても日本にもやってこない事例も発生しています。
そこで、今回の記事では技能実習生の入国が遅れてしまう事例やその理由、機会損失を出さないために出来る対策についてお伝えしていきます。
初めての技能実習生受け入れをご検討の方、こんな事実も心構えとして持っておいてください。
技能実習生の入国が遅れる理由と対策
監理団体に「〇〇月に入国できます」と言われて採用したのに数か月遅れたり、ひどい場合、遅れた挙句にキャンセルと言う事例もわずかながらあります。
受入企業からすれば、予定していた人員が来ないことにより企業活動に大きな支障が出るとともに、今までの面接や受け入れ準備に掛かった費用もすべて無駄になるなど大きな実害も出てしまいます。
もちろん、入国が遅れるのは、企業にとっても、監理団体にとっても望ましい事態ではありません。
そこで、実際に「入国の遅れの経験している」監理団体の担当者方々に遅延の原因と実施している対策を伺ってきました。
監理団体熟練担当者が教える技能実習生の入国が遅れる理由(入国遅延を経験したAさんの意見)
私の場合ですが、受け入れ企業様に説明をするとき、以下の3つの期間はコントールができないことをキチンとお伝えします。
- 外国で推薦状が出るまでの期間
- 外国人技能実習機構での審査が通るまでの期間
- 入国管理局での審査が通るまでの期間
なので、実施者の方に入国時期をお知らせする場合は、
「推薦状が届くまで面接後1カ月、機構へ申請してから、機構で1~2ヵ月、入管で1~2ヵ月、ビザ等で2週間~1か月かかります。」
と伝えて、入国予定月にかなり幅があるということを知っていただきます。また、機構へ申請するまでの期間については、受け入れ企業様の協力も不可欠です。
そもそも、技能実習生の入国までは日本と送出し国の様々な機関が関わっているため、本来ならば入国日を早い段階で明確にすることはできないはずなのです。
なので、機構へ申請してからのかかる期間を、幅を見て上記のように伝えています。
私がしている企業様への対応としては、進捗状況を常時お伝えしていることです。遅れているときには、都度連絡し、受け入れ企業様の不安を解消するように努めています。
そして、何かしらのミスで遅れそうであれば、率直に事情を説明し謝罪します。遅れる原因と言うのは一概には言えなくて、申請課のミスや書類のやり直しといった人為的なミスによる遅延もあります。私も何回もハンコをもらいなおしたことがあります。
また、送り出し機関(現地で実際に人を募集して送り出す組織)が実務に慣れていないと書類に不備が多くて、これも何度もやり直すハメになることもあります。
実際に、受け入れ企業様が困ってしまうのは、入国予定日をきっちりお伝えできないことです。ですので、なるべくはっきり申し上げたいのですが、企業様からすれば迷惑であることは承知の上で、確定的なことを申し上げて、遅延で混乱されるよりは、こういった事情から幅と余裕を持たせてもらいます。ただ、進捗の連絡はまめすることで凡その入国日を予想することができるように努めています。
監理団体の熟練担当者に聞いた入国日対策とは?(入国日対策に詳しいBさんの意見)
受け入れ企業様が機会損失を防ぐための対策としては、決して入国予定日は約束できないものだと考えておくことです。もしくは余裕を持った入国日を設定しておき、申請が順調な場合には、前倒しで受け入れ準備もできるようにしておく体制を作れれば一番です。
特に新規受け入れの場合は、大幅に遅延することがありますので要注意です。
むしろ許可が下りてから入国日を決めるぐらいでも良いぐらいといっても過言ではありません。
ただ、現状の制度だと受け入れ企業様が勘違いしやすいポイントがあります。
申請書類には入国予定日を記載する必要がありますが、その入国予定日を実習実施機関(受入企業)に対して強調して話す営業もいるため、ついついその日に必ず入国してくると誤解をしてしまう恐れがあるのです。
また、入国日が遅れることで対策しておきたいのは、宿舎契約の問題などだと思います。
入国日が遅れても、用意された家賃を支払わなければならないのかどうか、ここは不動産屋に確認してみましょう。他にも初めての受け入れだと気持ちが先走り、準備を予め済ませすぎてしまうと、様々な費用をかけすぎ、結果、有事の際に損失を増やしてしまう可能性があります。
対策としては、初めての時ほど、親身に相談やアドバイスをくれる誠意ある担当者や経験豊富な監理団体を選定することが必要です。
技能実習計画認定申請が入国の遅れの原因となることも(申請に詳しいCさんの意見)
技能実習生を受け入れる際には、受け入れ企業が技能実習の内容を計画し、申請する必要があります。
東京地方管轄では、新規の監理団体、新規の実習実施者での申請で、計画認定申請に1週間、在留資格認定証明書交付申請で2週間で降りている実績があります。一方、茨城地方事務所管轄で計画認定申請で2ヶ月かかったことがあります。
このように申請する管轄の事務所でも、遅延の原因となり得ます。
これも、多くの企業さんと付き合う中で経験してわかってきたことで、同じ管轄でも、申請内容によって差もありますし、一概には言えないということだと思います。
結論:監理団体側は入国月を制御できない!誠意ある担当者を選ぶことで対策
以上のように、監理団体は明確な入国月のコントロール権はありません。
それは当然仕方のないことなのですが、企業様と監理団体で揉めてしまう原因は、監理団体の営業担当者が「〇月には入国できます」などと、確定的に言ってしまい、技能実習初めての企業は経験がないので単純に信用し、期待を持たせすぎたといったコミュニケーション上の齟齬が問題となるケースも少なくありません。
調子のよいことばかり言う監理団体に加入してしまうと、思わぬ損失を招く可能性があります。逆に言えばキチンと現状を伝えてくれる監理団体であれば損失を防ぐことができるのです。
なので、監理団体を選定する際には、事実に即して誠意ある対応をしてくれるかどうかを基準に見極める必要があります。
そこで、おすすめなのは条件に合う複数の監理団体と面談し、信頼できる良い誠実な対応をしてくれる担当者を選別することです。
監理団体の選定は意外にしない企業が多く、知人の紹介や偶然選んだ一社目で決めてしまう会社が多いです。
しかし、この選定こそが技能実習生制度の成否を決めるほど重要なのです。
ぜひ、技能実習生を受け入れる際には技能実習生の選別の前に、監理団体の選定から力を入れてみてください。
その一助として、当サービスを利用していただければ幸いです。